つむぎレポート

No.0072013.08.29
株式保有特定会社の改正

川口 修司

 

「大会社」の株式保有割合の判定基準が50%以上に!

 

東京高等裁判所平成25年2月28日の判決があったこと受け、平成25年5月27日付で国税庁は相続、遺贈又は贈与により取得した財産の評価における財産評価基本通達189(2)の「株式保有特定会社の株式」の「大会社」の株式保有割合を25%以上基準から50%以上基準に改正しました。

取引相場のない株式については、原則として会社に規模に応じて純資産価額方式と類似業種比準方式を併用して評価することになりますが、ある一定以上の割合の株式を保有している場合には、これらの評価とは異なった株式保有特定会社として特別な評価をすることになっています。

東京地裁、東京高裁ともに平成2年当時の大会社の25%以上基準という割合は当時としては合理性があったと判断したものの、平成9年の独占禁止法改正によって会社の株式保有に関する状況は大きく変化し、本件相続開始時である平成15年においては株式保有割合が25%以上である大会社を一律に株式保有特定会社とすることは合理性を有していたものとはいえないと判断しました。

株式保有割合の変更

  大会社 中会社 小会社
従前 25%以上 50%以上 50%以上
改正後 50%以上

※なお、原則として平成25年5月27日以後の相続等において適用されますが、過去に遡って適用することもできるため、この改正を知った日の翌日から2月以内に更正の請求が可能です。ただし、更正できる期間は法定申告期限から5年以内に限られています。(通法23②三、通令①五、通法70①一)

今後の対策方法

株式保有特定会社については相続税対策の上では重要な位置を占めていました。

大会社の場合には類似業種比準方式が100%適用できる可能性があるため、株式保有特定会社に該当するかどうかで株式評価額に多大な影響を与えていました。

時代の変化により、合併、会社分割、株式交換などの組織再編行為が柔軟にできるようになってからは、グループ内の効率的な経営を目的としてホールディングス化経営を行う企業も増えてきました。しかし、持株事業と本業とをこなす事業持株会社の場合においても株式保有割合が25%以上基準を上回り株式保有特定会社として認定されるケースは少なくありませんでした。

今後は、事業持株会社のようなケースでも大会社における株式保有割合が50%以上という基準になれば株式保有特定会社に該当し株価が高くになるという事象は少なくなるものと考えられます。

また、制度の緩和により、合併、会社分割、現物出資などが柔軟にできるようになったことから、経済合理性を前提として会社の規模を拡大化させることによって類似業種比準方式の適用可能性が広がることが考えられます。非上場会社の株価対策にとっては良い方向になったと言ってもよいでしょう。