つむぎレポート

No.0042013.01.09
平成25年度税制改正の動向

押渡部 優子

平成25年度の所得から「復興増税」がスタートし、所得税については平成49年までの25年間、従前の所得税に2.1%の「復興特別所得税」が上乗せされます。さらに昨年8月には民主・自民・公明の3党合意により消費増税法が成立し、現行5%の消費税率は平成26年4月に8%まで、平成27年10月に10%まで段階的に引き上げられる見込みです。

 増税の話題が続く中で、平成25年度税制改正の内容は注目されるところです。昨年12月16日に行われた衆議院総選挙での政権交代に伴い、例年12月中に発表される税制改正大綱は、今月7日から自民党税制調査会で本格的に議論が開始されました。党税調は連立政権を組む公明党と調整後、1月下旬に与党税制改正大綱を決定し、2月には税制改正法案として通常国会への提出を目指しています。

消費増税に伴う軽減措置

家計は所得が多い世帯ほど、消費に回す割合が低下するため、所得水準に関係なく一律に課税される消費税は、所得に応じた税負担公平の観点から、その導入時よりいわゆる逆進性が指摘されています。

この低所得者対策として、民主党は現金給付による「給付付き税額控除」を主張していましたが、自民公明両党では食料品等の生活必需品の税率を低くする「軽減税率」を政権公約に掲げ議論を進めています。

諸外国においても日本の消費税に類似する税金は、対象品目ごとに複数の税率が採用されており、医療や教育、食料品や住宅購入などについては非課税若しくは半分以下の税率に抑えられています。

「軽減税率」を適用する場合には、対象品目の線引きが難しいほか、納税者となる小規模事業者においては税額計算の煩雑化による事務負担も懸念されます。また、軽減税率を平成26年4月の税率8%段階から導入する場合、通常国会で法案を成立させる必要があり、時間的制約からも本格的な導入は見送りの可能性が高いものと思われますが、住宅購入の負担を減らすための措置については消費税率の引上げ前後での駆け込み需要とその反動減による影響を回避するためにも、早期の手当てが期待されます。

相続税・所得税の改正動向

ねじれ国会の下に迷走した平成23年度税制改正法案や、消費増税法を柱とする社会保障と税の一体改革に係る税制改正法案には、富裕層への課税強化として所得税及び相続税の増税法案が盛り込まれましたが、いずれも審議中に削除されました。これらは平成25年度税制改正で改めて検討する旨の規定が附則として設けられ、先送りされています。

 相続税については、民主党政権下での税制改正案(相続税の基礎控除引下げ、最高税率を55%に引上げ、死亡保険金の非課税枠の縮小等)を踏まえて改正の検討がなされることが3党で合意されているため、従来から議論されてきた内容に大きな変更はないものと思われます。

所得税については、最高税率を現行の40%から45%(※住民税を考慮した場合55%)に引き上げる方向で調整がなされるようです。

 注目される税制改正大綱の詳細につきまして、次号以降でお伝えいたします。